二人の〝ドリス〟
シルバーバーチ最後の啓示
二章 二人の〝ドリス〟
現在(一九九〇年)英国でもっとも目立った活躍をしている女性霊媒に、二人の〝ドリス〟がいる。一人はドリス・ストーク、もう一人はドリス・コリンズである。その二人がそれぞれの夫君を伴って出席した時の、シルバーバーチとの対話の様子を紹介しよう。
最初に紹介するのはストーク女史で、夫君で心霊治療家でもあるジョン・ストーク氏を伴って出席した。シルバーバーチは例によって歓迎の言葉を述べた。
「私の霊団の者はお二人を新参者とは思っておりません。悩みごとをかかえて訪れる人に霊的自由、精神的自由、そして肉体的自由を与える仕事において私たちに協力して下さっている仲間、同僚とみております。
こうして、日々、霊の道具として働いておられる方をお迎えするのは、私の大きな喜びです。とくに多くの霊媒の方たちが、私との対話を楽しみにお出でになることを知って、私も満ちたりた気分になります。
と言いますのも、皆さんは進化の高い界層からの高級霊の指導のもとに仕事をなさりながらも、その霊たちが地上での仕事のために本来の波動を下げており、〝自分〟を出すことを嫌うために、その代表としてこの私に質問を用意して来られるのでしょう。
ご注意申し上げたいのは、私も皆さんと同じく一個の人間的存在であること、宇宙の全知識、全真理を手にしたわけではないということです。皆さんのご存知ない高い界層での生命活動の体験と、宇宙の摂理の働きについて幾ばくかの知識を身につけてきましたので、それを聞く耳をもつ地上の人々にもおすそ分けしようと思っているまでのことです。
どの霊能者、どの霊媒も拒みません。どなたも、こちらの情報源を通してそれぞれの使命について知らされ、なぜ今こうして地上に来ているかについて直観的に悟っておられることでしょうが、
私が申し上げることはそうしたものといささかも矛盾しないどころか、改めてそれを確認し、さらに、いかなる障害や困難に遭遇しても挫けることなく、さらに邁進するよう元気づけてあげることができます。
霊的能力者が施すサービスはきわめて特殊なもので、天賦の才能をもつ者のみの特権といってよいでしょう。そういう人たちがたどる人生には、似通った過酷なパターンがあります。
必ず人生のドン底を味わい、もはや物質の世界には頼りにすべきものが無いと諦めた土壇場で、崇高な霊的真理との出会いがあります。
魂の琴線に響く感動を味わう、その触媒となる体験を得るのがこの段階です。魂に内在する神性の火花に点火され、霊的意識が芽生え、霊界との間にリンクが出来ます。
そのリンクは一度できると二度と切れることがないばかりか、霊力がその量を増しながら、そのリンクを通して流れ込みます。私が言わんとしていることがお分かりでしょうか」
二人が声を揃えて、「分かりますとも」と言うと、シルバーバーチが続ける。
「そういうパターンをたどる以外に方法はないのです。天賦の才能を授かっている人は、自分を含めたあらゆる存在の源が物的なものではなく霊的なものにあるという真理に目覚めるには、絶体絶命の窮地の体験を味わうことになっているのです。
霊媒能力は特権であると同じに、大きな責任があることも意味します。生命力そのものを委託されているからです。
その能力のおかげで、病気の人々を癒やし、霊の世界からのメッセージを届けるばかりでなく、あなた方のもとを訪れる人々の魂を目覚めさせ、本当の意味で生きるということ───暗闇の中でなく真理の光の中で生きること───を教えてあげることができます。お分かりでしょうか」
ドリス・ストーク 「分かりますとも。霊媒としてまだ未熟だったころから、私はあなたの教えを座右の書として読み、あなたを尊敬してまいりました。いろいろと教えていただいております」
「そのようにおっしゃっていただくと、いささか当惑させられます。さきほども申しました通り、私もあなたと同じ人間的存在にすぎないからです。が、私が少しでも皆さんのお役に立っているとすれば、それは私にとっての最大の報酬をいただいたようなものです。
私も、物的カルマから超脱した高遠の世界の神霊のマウスピースとして、地上の皆さんに必要なメッセージをお届けするという仕事を、何よりの特権と心得ております。
仕事中に手応えを感じ、たった一人の魂にでも霊的真理が根づいたことを知った時、地球浄化の大事業が着々と進捗していることを知ってうれしく思います。
今この部屋にいる私たち一同、および霊界で同じ仕事にたずさわっている同志たちも、みなこの崇高な計画の一翼を担っているのです。
その目的とするところは、地上の人間に本来の生き方を教え、肉体と精神を存分に発揮すると同時に、本来の自我である霊性をよりいっそう顕現させるよう導くことです。
かくして得られた人生の目的についての悟りは、本当はエデンの園であるべきでありながら今や身の毛もよだつ恐ろしい唯物病に冒されている地球を救済するための手段でもあるのです。
お二人には、ご自分が貢献しているその成果を推し量ることはできませんが、大変な貢献をなさっておられます。それは本当は教会が行なうべきものです。が、イエスがいみじくも述べておりますように、キリスト教会は霊的真理の宝庫であるどころか、
人間生活の問題や大きな可能性とは無縁の、空虚で陳腐で時代おくれの独善的な教義を説くしか能のない、〝白塗りの墓〟(※)と化しております。
(※───ユダヤ教の律法学者やパリサイ人を〝偽善者〟と決めつけて白塗りの墓になぞらえたのであるが、ここでは霊性がカケラも見られなくなった、ただの建造物の意味に使用している。)
このように霊力は、大主教や主教や法王、司祭や牧師などを通してではなく、あなたのような、ごく普通の人間でありながら崇高な愛や叡知や霊力をあずかることのできる人を通して地上へ顕現されるように計画されているのです。
悲しみの涙にくれている、たった一人の人間の涙を拭ってあげることができれば、あるいは不治の宣告を受けた人をたった一人でも治してあげることができたら、あるいは出口の見えない迷路にはまった人に光明への道を教えてあげることができたら、それだけであなたの全人生が価値があったことになります。
私たちの仕事も同じです。受け入れる用意のできた人に霊力による援助を授けることです。そういう人はいろんな逆境の中であなたのもとを訪れます。
愛する人を失った悲しみを抱えて、あるいは人生に絶望して、あるいは不治の病に冒された身体で、あるいは悩みを抱え生きる意義を見失って等々、その動機はさまざまです。が、どの人も既成の宗教や科学や哲学や医学では解決策を見出すことができなかったのです。
あなた方は崇高な使命を担った者として、日常生活においてさまざまな困難に遭遇しますが、決して挫けてはいけません。何の面倒も生じないバラ色の人生など、およそ私たちにはお約束できません。
お約束できるのは、霊的な意味において使命の成就に勤しんでいれば、霊的に報われるということです。その段階に至ってはじめて、地上という物質界に降誕した意義があったことになるのです」
ストーク女史 「一か月前に他界したばかりの人が私(の入神現象)を通じて地上に残した奥さんへ通信を送ってきたのですが、その話の中で霊界での朝と昼と夜の生活ぶりを語っています。霊界でも地上と同じ〝一日〟の生活があるのでしょうか」
「こちらへ来てまだ霊的バイブレーションに順応していないうちは、地上時代と同じパターンの生活を営みます。低級界、いわゆる幽界は、いろいろな点で地上とそっくりです。これは、新参者にショックを与えないようにとの神の配慮なのです。いきなり環境が変わると順応が難しいからです。
そこで、今おっしゃった方のように、こちらへ来てからも引き続き朝と昼と晩の生活を営む者がいることになります。そういうものという固定観念を抱いているために、そうなるのです。こちらは思念が実在となる世界です。
意識の変化が生じないかぎり、その状態が続きます。それとは別に、地上に残した愛する者の面倒を見たくて、より高い世界への向上を望まない者もいます。
こちらにも庭があり、家があり、湖があり、海があります。それぞれに実体があります。実在なのです。フワフワとした、形態のない世界ではありません。住民はやはり人間的存在です。ただ、物的身体がないというだけです。霊界の自然環境は芸術的な美しさにあふれ、とても言語では表現できません。
家屋に住まうということは自然なことです。こちらでも家の中での生活がありますが、こちらの家は、地上時代にその人が培った霊性が反映して自然にこしらえられているという点が、地上と違います(※)。その家に庭があるのも自然なことですが、
庭木の手入れは、しなければならないと思えば、すればよろしいし、特に手入れをしなくても、その人の霊性に応じて手入れがなされます。そのように霊の世界の仕組みができているのです。だからこそ新参者もショックを受けずに霊的環境に適応していくのです。
(※───死後に住まう家がこの地上生活中に着々とこしらえられているという話は、他の霊界通信でもよく出てくる。信じられないのであるが、シルバーバーチまでもがこうもはっきりと述べているとなると、信じざるを得ない。地上では豪邸に住んでいても、その生活に霊性が欠けていれば、霊界では貧弱な家に住むことになるらしい。俗にいう「徳積み」が、霊的には生活環境となって具現化すると考えればよいのであろうか。その辺の原理を説いた通信は見当たらない。)
霊の世界は進化の階梯を上昇しながら、上下の界が互いに融合し合っているのでして、平面上の地理によって区分けされているのではありません。
霊性が開発され、魂が向上するにつれて、より高い界層へと適応するようになり、自動的にその界に所属するようになります。こうしたことは完ぺきな摂理の完ぺきな働きの結果です。何一つとして偶然の産物は存在しません。
霊性に歪みがあれば、霊界の病院へ行って然るべき治療を受けることになります。霊界の孤児、つまり両親がまだ地上にいる子供の場合は〝養母〟にあたる霊が付き添います。
地上的縁のある霊の場合もありますが、霊的な親和性の関係で付く場合もあります。
その他、ありとあらゆる事情にそれなりの備えが用意されています。大自然の摂理は何一つ、誰一人として見落とすことはありません」
ここでシルバーバーチは話題を変えて、かつてストーク女史が〝支配霊信仰〟の話題をだした時のことに言及して、改めてこう述べた。
「これはとかく地上の人間が陥る過ちの一つでして、残念に思います。指導霊とか支配霊というのはどの霊媒にも付いています。が、そういう資格を与えられた霊は、自分が崇拝の対象とされることは間違いであることを、よく承知しております。(※)。
崇拝の対象は大霊以外にはありません。愛と叡知と摂理の権化です。私が皆さんからの感謝の言葉を有難いと思いつつもお受けしないのは、そういう理由からです。
本来の崇拝の念は大霊へ向けられるべきであり、そこに親と子の関係にも似た、より深い融和が生まれます。その対象から外れて自分へ向けられるようになることは、支配霊として許されないことなのです」
※───これはスピリチュアリズムという大事業の計画のもとに選ばれた指導霊や支配霊 (この用語の区別にとくにこだわる必要はない)について言えることである。
霊的知識や教養のない霊能者の背後には崇拝の対象とされる───いわゆる〝神や仏に祭り上げられる〟───のを得意に思う者がいて、歴史上や神話上の立派な名前を騙るようになる。その波動を受けて霊能者の方もそう思い込むようになる。
この種の霊および霊能者はもともと大事業の計画の中に組み込まれていなかったとみて差しつかえない。
シルバーバーチの霊言の陰にかくれて存在が薄くなっている高級な霊言集に 「ラマダーンの叡智」とか「ブラック・クラウドは語る」というのがある。
ラマダーンもブラック・クラウドもシルバーバーチが〝同志〟と呼んでいる高級霊であるが、やはり最後まで自分の地上時代の身元を明かさず、本当に通信を送っているのは自分よりはるかに上層界の〝光輝く存在〟であって、自分はそのマウスピースにすぎないと、シルバーバーチと同じことを言っている。
ドリス・ストーク女史は霊能養成会を開いているが、ある日の交霊界にその会員十二人が揃って出席してシルバーバーチと対話を交えている。その時の質疑応答を紹介しておこう。
───指導霊はどのようにして決まるのでしょうか。(ここでは守護霊も含めた背後霊全体の意味で訊ねている)
「宇宙には斥力(反発力)があるように引力(親和力)もあります。親和性のある者どうしが自動的に引き合い、引かれ合うという法則です。
愛は、霊力と同じく、宇宙で最も強力なエネルギーの一つです。バイブルにも、愛は摂理の成就である、とあります。摂理として顕現している大霊は、愛と叡知の権化だからです。
時として地上での前世の縁で指導霊になる場合もあります。どうしても片づけなければならない事が地上にあって、そのために再生することになった場合、霊的自我はあらかじめそのことを承知しております。そして同じ霊系の高級霊の指導のもとに段取りを整えます。
指導霊としての責務を引き受けた霊は、それまでに身につけた霊的資質の多くを犠牲にして(波動を下げて)、この魅力のない世界───と言っては失礼ですが───の圏内へと降りて来ます。
それは、危険と犠牲を強いられる仕事ですが、それを敢えて引き受けることができるということは、その霊の進化の水準の高さの証明でもあるのです。
その犠牲的献身によって地上の人々の人生に光明をもたらし、生きる目的を見出させ、使命を成就させることになるのです。ここに愛の摂理の実践の典型があります」
―――私が向けている関心の一つに動物への福祉問題があります。が、英国でも動物実験が多いことを残念に思っております。何かよい改善方法はないものでしょうか。
「これは私にとってきわめてお答えしにくい問題の一つです。簡単に〝こうしなさい〟と申し上げたいところですが、それができません。
なぜかというと、地上生活の目的の一つは霊的意識の覚醒です。それが成就されれば、大局からの物の見方ができるようになります。優先すべきものを優先させることができるようになるということです。合わせるべき焦点が正確になるということです。
残念ながら現段階の人類の大半は、霊性の発達の欠如から、自分がもともと霊であり、それと同じものが動物にも宿っていることが理解できません。たしかに人類は機能的には動物に優ります。
が、本質的には同じ霊的存在なのですから、自分より進化の低い階梯にある動物を慈しみ保護してやるべきなのに、自分たちの病気治療の研究のために、無抵抗の動物を材料として、残酷な実験をくり返しております。が、これは間違いです。
こうした邪悪な、悪魔的ともいえる動物実験を止めさせるためにも、時間は掛かりますが、まず霊的知識の普及が必要です。
そして、人類全体が、今行なわれていることが間違いであることに気づく段階にまで意識が向上する必要があります。短期的に見れば、それまでは、一時的に今まで以上に動物実験が盛んになることもあるでしょう。
皆さんとしては、何とかして生きた動物に苦痛を与える方法以外の方法へ転換させるように、不断の努力をすることです。決してあきらめてはいけません。霊的な旗印を鮮明に維持しつづけることです。点滴、岩をもうがつ、と言います。最後まで頑張ってください」
───霊性開発につとめているのですが、一歩進んだかと思うと二歩後退しているように思えます。こういうものなのでしょうか。背後霊や私の母親は私に絶望しないかと心配なのですが・・・・・・
「二歩後退しているというのは、どうして分かるのでしょうか」
───努力すれば努力するほど、人に与える印象がスピリチュアルでなくなっていくように思えるのです。
「霊的な褒賞はそう簡単に得られるものではありません。もしも簡単に得られるものであれば、あえて得るほどの価値はないことになります。この道は石ころだらけの、進みにくい悪路の連続です。霊的摂理の関係上どうしてもそうならざるを得ないのです。
考えてもごらんなさい。もしあなたが困難と悲哀と苦悶の体験をしなかったら、そういう逆境の中にいる人があなたのもとを訪れた時、あなたはどう対処なさるのでしょうか。
空は晴れわたり、太陽がさんさんと降りそそぎ、何の苦労もない毎日を送っているようでは、魂は目を覚ましません。困苦と難渋の中でこそ魂は目を覚ますのです。
魂の奥に隠された黄金は、たたき砕かれてはじめてその光輝を発揮することになるのです。ダイヤモンドは最初からあの美しい姿で飾られているのではありません。もとは土塊と埃の中に埋もれていたのです。それが掘り起こされ、砕かれ、磨き上げられて、ようやくあの輝きを見せるのです。
霊性も同じです。しごかれ、試されてはじめて発揮されるのです。鋼鉄と同じです。それ以外に方法はないのです。苦難を体験してはじめて霊の光輝と崇高性が発揮されるのです。
ですから、困難を魂への挑戦課題として歓迎するのです。それが地上人生の目的なのです。もしも気楽で呑ん気な生活を送っていたら、内部に宿る素晴らしい霊性に気づかないまま生涯を終えることになります」
───私は精神統一の修行を何年も続けておりますが、どうすればいちばん良いのでしょうか。
「今までどおり修行なさることです」
───これからもずっとですか。
「そうです。完ぺきの域に達するには永遠の時を要します。もちろん地上生活では不可能ですし、こちらへお出でになっても、やはり不可能です。完全なのは大霊のみです」
───大霊と一体になるのは可能なのでしょうか。
「本質的には人間は大霊と一体です。霊性においてつながっているという意味です。ですから、心配・不安・悩みといった低級感情を消し、大霊の計らいに絶対的な確信と信念を抱き、世俗の喧噪から遁れて魂の奥に入り、平安と静寂の中に休らい、不屈の精神に燃えることです。
精神を統一するにはいろいろな方法があります。いずれにしても、決して容易ではありません。が、修行の努力は必ず報われます」
───ある人のために苦心さんたんして、全身全霊を傾けたあげくに、お礼どころか、ひどいしっぺ返しを受けることがあります。
「霊的能力を授かった人の責任は、いつでも手を差しのべる用意をしておくことです。あなたが力になってあげることの出来る人が連れてこられます。あなたの方から探してまわることはありません。
あなたから発せられる霊的な光輝によって、そういう人が引きつけられるのです。その時こそあなたが人のために役立つことができるチャンスです。
あなたが精いっぱいの努力によって、かりに成果をあげることができなくても、それはあなたが悪いのではありません。その人がまだ霊的な用意が十分でなかったということです。そんな時、せっかくのチャンスが実らなかったことに、ひそかに涙を流してあげて、またいつか、チャンスが巡ってくることを祈ってあげることです」
───霊界の住民は誰でも地上の者と通信できるものでしょうか。また、みんな通信したがっているのでしょうか。通信には特別の練習がいるのでしょうか。
「霊界から地上界へと通信を送るのは、そう簡単なものではありません。さまざまな障壁があります。が、それらを克服して通信を送ってくるのは、愛の絆があるからにほかなりません。愛もなく、地上界へ何の魅力を感じない人もいます。
地上を去ったことを喜んでいるのです。さらには、死んだことに気づかず、いつまでも地上圏をうろついている者もいます。
地上人類への愛念を抱く霊───それは必ずしも地上的血縁のある者とはかぎりません───は、ありとあらゆる手段を尽くして地上界と接触しようと努力します。
そして通信を送るテクニックを身につけます。地上界と霊界とでは存在の次元が異なります。同じ霊的存在ではあっても、地上の人間は肉体という物質にくるまれた霊です。
そこに通信の難しさが生じます。こうして私が通信しているのを、あたかも受話器を取ってダイヤルを回すだけの電話のように想像してもらっては困ります。電話ですら不通になったり混線したりします。
霊界通信にも困難はつきものです。が、愛・友情・親和性・血縁関係、それに相互の関心のあるところには、通信を可能にするための、ありとあらゆる努力が為されます」
───私は今だに自分のことがよく分かりません。私のために働いてくれている何ものかがいることは分かるのですが、まだ自分の指導霊ないし支配霊が誰なのか分かりません。
「光を見出すのは闇の中にあってこそです。喜びを見出すのは悲しみを味わってこそです。健康の有り難さが分かるのは、痛みを味わってこそです。あなたはご自分についてこれから見出していかれます。本当の自我はちゃんとあるのです。ずっと存在しているのです。
あせってはいけません。地上の人間の悪い点は、せっかちだということです。霊的成長はインスタントに身につくものではありません。私たちも、あなた方が長い眠りから覚めるのを根気よく待っているのです。
何十年も掛かるかも知れません。ところが、ようやく覚めると、いきなり〝何をぼやぼやしているのです!早くやらなくては!〟と言い出します。
大霊は急ぎません。すべてが計画どおりに着実に進化するように、摂理を配剤しておられるのです。
そのうちあなたの真の姿が明らかにされる日が来ます。あなたは今、梯子のいちばん下の段に足を置いたばかりです。これから昇りはじめるのです。いくつもの段を昇らねばなりません。が、昇るにつれて、ご自分について、そしてご自分の無限の可能性について悟るようになります」
───この世を去ったあとたどる七つの界層についてご説明ねがえませんか。一界一界どういう過程をたどるのか、また各界がどういう仕事をするのか、大ざっぱで結構ですが・・・・・・
「まず最初にお断りしますが、私はその〝七つの界〟とやらを知りません。第一から第七まで番号のついた界というものを私は知りません。私が知っているのは、たった一つの界があって、それが無限の階梯をなしているということです。
霊性が高まれば、自動的に次の境涯へと進化しています。そういう過程が永遠に続くのです。なぜなら完全は永遠の時を要するからです。
どういう仕事をするか、ですか。それはその人によりけりです。もしも授かっていた本能を地上で発揮できなかった人は、こちらへ来て発揮するよう努めます。地上でやりたくても出来なかったものが、こちらで出来ます。
たとえば、子供が大好きなのに子宝に恵まれなかった人は、こちらで多くの霊的孤児 (幼くして親より先に他界した子供)の面倒を見ることになります。
心霊治療家だった人は、こちらの病院でその能力を発揮することができます。音楽の才能のある人は、地上で経済上の理由から音楽会などに行けなかった人たちのために演奏会を開くこともできます」
───私はどのスピリチュアリスト教会にも所属していないのですが・・・・・・
「それが何か不都合でも生じましたか」
───私はどうということはありません。多分あなたにも・・・・・・
「私もどうということはありませんよ」
───どういうわけか私は教会に所属する気になれないのです。何かが私を躊躇させるのです。何なのでしょうか。
「人間には自由意志と責任があるというのが、私たちの基本的理念です。自分の意志を自由に表現する機能を大霊から授かっています。糸であやつられる人形ではないということです。自由意思があるということです。もちろん、ある一定範囲内でのことです。
つまり、あなたが到達した進化の程度に応じて行使できる範囲がきまるのです。
もしもあなたが気に入らないと思えば、拒否なさればよいのです。あなたにはもっと別の進むべき道があるのかも知れません。霊界のほうから強制することはありません。援助を求めている人にだけ援助します。ただし、あなたが選択なさることについての責任は、すべてあなたにあることにもなります」
ストーク女史 「この方はご自分ではそうは思っていらっしゃらないでしょうけど、人間的にはスピリチュアリストをもって任じている人よりもっとスピリチュアリスト的な方です」
「打ち明け話をしましょう。私自身もスピリチュアリストだとは思っておりません。私は肩書には関心がないのです。どうでもいいことです。こちらの世界では何の意味もありません。
大切なのは人のために役立つことをし、可能なかぎり最高の理想へ向かって生きることです。皆さんの名前だってずいぶんいい加減なものです。私が関心をもっているのは、霊的自我と、それをどのように発揮しようとしているかです」
───私はスピリチュアリズムが大好きなのですが、時折怖くなることがあります。なぜだか自分でも分からないのですが・・・・・・
「恐怖心というのは〝未知〟であることから生まれるものです。分かってしまえば恐怖心は消えます。ですから、なるべく多くの知識を手に入れることです。多く知ることにより、それが光となってあなたの全存在を照らし、恐怖心を追い払います」
ストーク女史 「私から質問があります。私は養成会を指導しているのですが、私自身は正式のトレーニングを受けていないものですから、やり方が伝統的ではありません。
体験に基づいて私の思うままを教えるしかありません。これまでのやり方でよろしいのでしょうか、それとも私自身がもっと正式なトレーニングを受けるべきでしょうか」
「大霊が無限であるということは、大霊に近づく道も無数にあるということを意味します。たった一本の道というものはありません。またどこかの一個の団体の専売特許でもありません。
私たちは〝今はやりの〟とか〝伝統的な〟といった方法にはこだわりません。むしろ非伝統的であることに誇りを覚えるくらいです。伝統的ということは古くさいということを意味し、進歩がないということの証明でもあります。
たとえばチャクラ(※)について説くことは必ずしも必要とは考えません。
肝心なことは、特別な人(霊能者)に賦与されている霊的能力を発現させることです。誠実さを動機とし、人のためにということをモットーとしておれば、道を誤ることはありません。
(※───チャクラというのは〝車輪〟を意味するサンスクリット語で、肉体と幽体の接着剤的役割をしている〝ダブル〟にある七つの皿状の凹んだ渦巻きのことである。これが回転することによって生命力を出し入れしている。これが霊的能力にも大きく関わっていて、ヨガではこの開発を奨励する。
シルバーバーチがあまり勧めないのは、とかく超能力にこだわって霊性の開発をおろそかにする傾向があるからで、私は、人体の構造と内臓器官の生理を知ることが治療家にとって不可欠であるように、霊能開発を本格的にこころざすには、こうした霊的生理について知ることが不可欠であると考えている。 )
ご自分でこうだと思うことを実践なさることです。間違っていれば、すぐに気づきます。大霊は各自に判断のモニター装置を植え込んでくださっています。道から外れかけていると、すぐに警告を発してくれます。目的さえ誠実であれば、必ず良い結果が得られます。
私は、こうして養成会の皆さんと語り合う機会を得たことを大変うれしく思うと同時に、これが皆さんにとって何らかの力になることを望んでおります。また、皆さんからお寄せくださる愛と感謝と情愛に深く感謝の意を表現したいと思います。
私の語ったことが皆さん方の存在の中に宿り、人生とその目的について、以前より少しでも深く理解する上で力になっていることを知ることは、私にとって途切れることのない感謝の源泉です」
ストーク女史「養成会を代表して私から、本日こうしてあなたとの語り合いの機会を設けてくださったことに厚くお礼申し上げます。この日をどれだけ心待ちにしていたことでしょう。きっと生涯忘れ得ない夜となるものと信じます。
これからは、あなたの霊言集を読むたびに〝ああ、自分はこの方と直接語り合ったのだ〟と、今日のことを思い出して、その光栄をしみじみと思い出すことでしょう。皆の者に成り代って私から改めてお礼申し上げます」
「そのお言葉は有り難く頂戴いたしますが、いつも申し上げておりますように、私はいかなる礼も頂きません。指導霊や支配霊を崇拝の対象とする傾向に対して、私は断固として異議を唱えます。崇拝の対象は大霊以外にはあってはならないのです。
私は地上の年数にして皆さんよりはるかに長く生きてきたというだけのことです。その間に為し遂げたことの結果として、地上の言語では説明のできない光明と美にあふれた境涯に到達することができました。
すでに何度も申し上げた通り、そういう境涯にいる同輩の多くに、地球浄化の大事業への参加の要請があったのです。それには、これまでたどってきた道のりを逆戻りしなければなりません。が、
私は喜んでお引き受けして、それまでに蓄積した体験から得た知恵、知り得た大自然の摂理の働き、宇宙の大霊についての理解と崇敬の念、およびその大霊から届けられる恵みのすべてを皆さんにもお分けすることにしたのです。
もちろん、霊的に受け入れの用意ができた人にお分けするということです。ここにお集まりの皆さんにはその用意がおありです。
私たちは協調の体勢で地上を浄化し、より美しい、生き甲斐のある生活の場とするための大事業計画の一端を担うことができた皆さんは、この上ない光栄に浴されておられます。私も光栄です。
地球浄化の一環として私たちがたずさわっているのは、物欲第一主義の打破です。
これは言わば地球のガンです。利己主義・どん欲・強欲・暴力───これらはみな物欲第一主義の副産物です。これらを無くし、地上の子らが精神的にも霊的にも豊かさを享受して、互いに協調し合える世界を築くことが目的です。
今、私たちはそういう仕事にたずさわっているのです。これは大規模な戦です。皆さんの中には将校として参加すべく武装している最中の方もいます。小競り合い程度の問題で絶え間なく葛藤させられているのは、その大規模な戦に備えて、将校としての資質を試されているのです。
ですから、迷わず突き進んでください。常に最善のものを求めてください。そうした努力が大霊へ近づかせ、創造の大源から放たれる愛に浸らせることになるのです。大霊の祝福のあらんことを」
次にドリス・コリンズ女史が夫君フィリップ・コリンズ氏と霊視能力者のマージョリ・オズボーン女史とともに出席した時の様子を紹介しよう。まずシルバーバーチが歓迎の挨拶のあとコリンズ女史にこう述べた。
「あなたは背後で絶え間なく援助している高級霊団の存在には先刻お気づきのはずです。これから申し上げることが、その霊団から告げられていることを補足ないし確認することになれば幸いです。
といっても、私がこの霊媒(バーバネル)を通して申し上げていることは、私の霊団から授かったものをくり返しているに過ぎません。が、首尾よく伝えることができれば、それだけ多くの霊的真理が地上に届けられたことになります。
覚悟はできておられると思いますが、天賦の霊的才能を授かって生まれてきた人のたどる道は、平坦なものではありません。ロートスの実(※)を食べて安楽な道を歩みたい者は、この道にたずさわらないほうがよろしい」
※───ギリシャ神話で、これを食べると浮き世の苦しみを忘れるという。
コリンズ女史「覚悟はできております」
「私は実はそのウラを申し上げたくて酷なことを申し上げたのです。大霊の大事業に霊界から参加し、地上人類に本来の生き方を教えることに献身している霊たちは、あなたのような方を通して仕事をするのです。あなたのような才能を身につけた方を通して働く以外に方法はないのです。
地上の指導者であるべき人たち───聖職者・科学者・思想家───が何もできずにいるとき、あなた方は悲しみに暮れている人、病気に苦しんでいる人、悩みを抱えている人、生きる目的を見失った人に解答を授けることができます。
崇高な霊力のチャンネルとして、そういう人々の霊性に働きかけて、本来の機能を取り戻させることができます。それは霊能者にしかできない仕事です。大霊の子らに奉仕することによって大霊に奉仕するという特権を授かっているということです。
自己の存在価値をあらしめる仕事にたずさわるということは、詮ずるところ犠牲を強いられるということです。なぜならば、それには莫大な霊力が投入されるからです。霊力は無尽蔵です。が、それが地上に顕現されるチャンスが少なすぎます。
そこであなたのような方に犠牲を強いることになるのです。が、犠牲が大きければ大きいほど、それだけ多くの霊性が発揮されます。神の道具としてよりいっそう磨きがかかり、以前にはできなかったことが可能になります。
と言って、決してラクな道ではありません。が、もともと霊の褒賞は刻苦することによってのみ得られるのです。葛藤の末に得られるものです。遭遇する困難、それに、物分かりの悪い連中によって持ち出される、あらずもがなの障害も克服しなければなりません。
そうした困難や障害との葛藤があなたの霊性を磨き、洗練し、背後霊団との調和を促進し、豊かな霊力の受容力を高めてくれるのです。私の申していることがお分かりでしょうか」
コリンズ女史「分かりますとも、シルバーバーチさん。よく分かります」
「私からのメッセージが元気づけの言葉となって、あなたがこのまま勇敢に突き進まれ、最善を尽くされ、いつどこにいても人のために役立つことをなさっておれば、私は私なりに存在価値を発揮したことになり、あなたも同様に存在価値を発揮されていることになるのです」
そう述べてから夫君のフィリップのほうを向いて、
「以上の私の話をお聞きになりましたか」
フィリップ「拝借しました。一言もらさず・・・・・・」
コリンズ夫人「私の使命の大きさは先刻承知しております。そういう使命を授かったこと、そして(フィリップという)よきパートナーを用意してくださったことを、神に感謝いたしております。これからも力のかぎりを尽くす所存です」
「あなたに要請されているのはそれだけです。最善を尽くすということです。本日ここに集まった方たちは、私たち霊団も含めて、神の大いなる計画の一翼を担っております。
私が永遠の創造過程と呼んでいるものを促進するために、こうして集められたのです。人類の進化に寄与できることは何と素晴らしいことでしょうか。
私たちは地上人類の本来の姿、すなわち物的身体を通して自我を表現している霊的存在であることを教えてあげることができます。その生活の中で最優先すべきものを優先し、霊的原理に基づいた生き方をしていれば、かつて経験したことのない生きる喜びを見出すことになります。
地上人類の最大の問題点は、大霊よりも黄金の子牛(金銭)を崇拝の対象としている者が多すぎることです。欲の皮がつっ張れば霊性はしぼみます。
霊性が第一であることを一人でも多くの人に説かないといけません。地上のいかなる財産も、この世かぎりのものです。来世まで持って行くことはできません。
知識が無知と取って代るにつれて、光が闇をかき消し、真理が広まるにつれて迷信が退却せざるを得なくなります。私たちと同じくあなたも、物欲第一主義の戦場で霊的解放のために闘うという栄誉を担われた方です。霊は必ずや物質をしのぎます。
霊的叡知が行きわたれば、すべてが収まるべきところに収まります。すべての人類が自分自身の(肉体と霊と精神の)調和のみならず、同胞との調和の中で暮らすようになります。
そうなれば病気もなくなります。残念ながら今の地上には病気が多すぎます。さらに、霊的に全人類が一つであるという理解が広まれば、みっともない利己主義の産物も出なくなるでしょう」
そう述べたあと、子供へのお説教みたいなことを述べて申し訳ないと詫びてから、コリンズ女史の背後には素晴らしい霊団が控えているので、憶することなく突き進むようにとの励ましの言葉を述べ、さらに、ご主人のフィリップに向かってこう述べた。
「あなたは奥さんの片腕として、言うなれば〝人間の砦〟となるべく連れてこられたのです。これからも精いっぱいのことをしてあげてください。これまでも決してラクな道ではありませんでしたが、埋め合わせの法則は間違いなく働きます。低く落ちれば、それだけ高く上がることができます。
失敗しても、すぐに気を取り直して、また始めるのです。個人であろうとグループであろうと、本当のあなた、神性を秘めた永遠の霊的自我に危害を与えるような出来ごとを生み出せる者は、この物質界にはいません。
いついかなる時も泰然自若とした態度を保持することです。なるほど大事業のために選ばれた人は違うと思わせる、冷静で自信に満ちた雰囲気を常に発散してください」
続いて霊視家のマージョリ・オズボーン女史に向かって、
「コリンズご夫妻に申し上げたことは、あなたにも当てはまるとは思われませんか」
と問いかけると、
オズボーン「そっくりそのままと言ってもよいと思います」
「何とかして話をあなたのことにもつなげようとしたのですが、どうやらうまく行ったようですね。霊的大事業の道具として派遣された者にラクな道は有ろうはずがありません。もしラクであれば、授けられた才能が発揮されないのです。
ラクで呑ん気な生活をしていれば、内部の神性は顕現しないのです。困難・障害・難題・悪条件の中でこそ霊性に磨きがかけられるのです。
ダイヤモンドがあの無垢の輝きを見せるようになるまでには、何工程もの破砕と研磨とを経ているのです。それなしには秘められた美しさが出てこないのです。
霊力に優る力はこの地上には存在しません。万事休す、と思われた絶体絶命の窮地からでも救い出すことのできる力をそなえております。もしもその力について疑念が湧いた時は───人間である以上それはやむを得ないことです───かつてあなたが真っ暗闇の中に閉じ込められた時に、ひとすじの光明、霊の黄金の光が射し込み、進むべき道が示され、人間的愛とともに神の愛の存在に気づかされた時のことを思い出して下さい」
オズボーン「おっしゃる通りでした」
「道に迷ったがゆえに本当の自分を見出すことができたのです。霊的に二度と迷われることはありません」
オズボーン「本当に有り難いことです」
「私は、本日ここにお集まりのどなたよりも長い生活を体験してまいりました。その私が今もって感動を禁じ得ないのは、神の摂理の完ぺきさであり、叡知の無限さです。誰一人として見落とされることもなく、またその監視から逃れることもできません。
霊的能力を授かっている者は、それを発揮させねばなりません。それがその人に課せられたサービスです。いかなることが起きようと、その能力を授かったがゆえの特権を行使することによって、自己実現に努めなくてはなりません。
それ一つに専心していれば、他のことはすべて落着くところに落着きます。
取り越し苦労は何の役にも立ちません。霊性をむしばむ大敵です。不屈の精神・沈着・自信・決意───こうしたものは悟りを開いた魂の属性です。これまで導かれてきたのです。これからも導かれます。
疑念が湧いた時は、その思いをそこで押し止め、精神を静めて、魂の奥に引っ込むのです。本当の自我である霊性が道を教えてくれます。
この地球浄化のための戦いにおいて、将校たる者はうろたえることがあってはなりません。持ち場を死守しないといけません。弱気になってはいけません」
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2020.01.10 12:10
2020.01.10 01:23