聖職者の使命

新たなる啓示

二章 聖職者の使命


シルバーバーチが伝来の組織的宗教に批判的であることはよく知られている。したがって、キリスト教の位階の中でも高位の〝キャノン〟でありながらスピリチュアリズムにも理解のあるジョン・ピアスヒギンズ氏がゲストとして出席した時は、さぞかし見ものだったことであろう。その様子を次の対話から窺い知ることができそうである。
まずシルバーバーチから述べる。

「あなたほどの霊的真理を手にされ、新しい理解への道を歩んでおられる方が、今さらこの私に何のご用があるというのでしょうか」

キャノン───レンガ塀を取り壊す方法をお教え願えまいかと思いまして・・・。実は今、私は大きな壁に突き当たっているのです。

「旧約聖書にあるのではありませんか───ヨシュアという男が大声で怒鳴ったら、城壁が崩れ落ちたという話が・・・・・・。あなたも、一つ、大声で怒鳴って見られてはいかがですか」

キャノン───これはまた恐れ入った話で・・・・・・。崩れ落ちる破片で私自身がケガをしなければいいですが・・・・・・

「それは大丈夫です。あなたはこれまでずっと守られてきております。イザという時は援助の手が差しのべられております」

キャノン───あなたの助言を頂くのが一番だと聞かされてやってまいりました。

「私も、あなたと同じく一個の人間的存在に過ぎません。あなたより少しばかり長く生きてきたというだけです。ただ私には、あなたとは別の次元での生活体験があります。
その生活によって宇宙の摂理がどういう具合に働いているか、それを背後から霊的にどう操っているかについて、いくばくかの知識を得ることが出来ました。
そこで私は、これまで辿ってきた道を後戻りしてこの地球圏に舞い戻り、受け入れる用意の出来た人にその知識を分けて差し上げているところです。
〝馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることまではできない〟という諺があります。ナザレのイエスも豚に真珠を投げ与えるような愚かなことをしてはいけないと戒めております。霊的真理というものは、それを理解する能力が具わっていない人には、どう押し付けても無駄であることを教えているのです」 

キャノン───それはよく分かります。

「正直に言わせて頂きますが、不幸にしてそういう人がキリスト教の牧師の中に多く見受けられます。そういう人は霊的なものを見ることも、聞くことも、語ることもできないのです。知識だけは大変なものをお持ちです。
神学・ドグマ・教義・儀式典礼・・・それはそれはよく勉強していらっしゃいます。が、所詮は物質界に関わったことばかりです。霊の世界に関わったものは何一つご存知ありません。
さて、地上に生を受ける全ての人間がそうであるように、あなたも、この物質界に誕生するに当たって、今歩んでおられるようなコースを自ら選択なさっておられます。信じていただけないかも知れませんが、それは構いません。
人間にとって理解し難い問題であることは確かです。でも、たとえ信じていただけなくても、私としては事実は事実として述べるほかはありません」

キャノン───私は信じます。

「勇猛な闘士はロートス(※)を食べたいとは思いませんし、バラ色の人生を送りたいとも思わないものです。すすんで困難に満ちた人生コースを選んで生まれ、精神力をよりタフに、より厳しく鍛え上げます。だからこそ、あらゆる困難を克服できるのです」
※───ギリシャ神話で、その実を食べると現世の苦悩を忘れさせたと言う想像上の植物───訳者
「困難に打ち克つ方法はいろいろとあるでしょう。勇猛果敢にぶち当たるのも一つの方法でしょう。じっくりと耐えて、徐々に克服していくのも一つの方法でしょう。
もっと穏やかに、祈りと瞑想の中で解決法を見出すという方法もあります。あなたほどのお方になれば、どんなことがあっても、この道から外れるようなことはないでしょう。あなたには大事な仕事があります。
それは、霊的知識による啓発を受けるべき人々(聖職者)にそのチャンスを与えることです。使命を自覚するということの本当の意味を悟ってもらわねばなりません。
聖職者の使命は、宇宙で最も崇高な力の中継役となることです。教会や礼拝堂を〝白塗りの墓〟とせず、彼ら自らが霊力の流れる生きた殿堂となることです。
霊的真理に飢えた人が彼らの言葉によって魂の渇きを癒やされ、魂の空腹を満たされ、身体の病を、イエスの時代と同じように、霊的治癒力によって癒やされるべきなのです。この原理は今も昔も同じです。奇跡というものはありません。自然法則の顕現に過ぎません。
じっくりと時を待つことです。人間のいちばんいけない点は、何でも性急に求めすぎるということです。その態度を見ていると、まるで大霊に代わって自分が早く片付けてしまいたいと思っているかのようです。
何年もの間モグラのように暗闇の中にいたのが、ある日ふと見上げて〝光〟というものがあることを知ります。すると、もう、それに夢中になって、今すぐにでも世の中を変えてしまわないと気が済まないような態度を取り始めます。
そう簡単にいくものではありません。霊に関わることは、ゆっくりと、霊妙に、しかし確実に進化するものです。霊的成長、霊的感性、霊的理解力というものは、アクセルを踏んで一気に進めるわけには行かないものです。霊力を強制的に操ることはできません。
無理やりに注入するわけには行きません。それに適した通路が要ります。地上に顕現されるための手段です。」

キャノン───そうだと思います。

「霊的成長がもしも努力なしに得られるものだったら、それは神の公正が愚弄されることになります。罪深き人間が簡単に聖人になれることになります。それでは公正の原理が存在の意義を失います。霊的成長はゆっくりと、しかし確実に進行するしかありません。
次の一歩を踏み出すに先立って、今の足場をしっかりと踏み固めないといけません。成長と発達は無限に続くのですから、焦ることはありません」 

キャノン───我慢しろとおっしゃるわけですね?

「何度も申し上げておりますように、ドアをそっと押してみて、もし開かなかったら、無理して開けようとなさらないことです。カギのかかったドアをこじ開けようとしてはいけません。が、もしもドアが気持ちよく開いたら、その方向へ行かれることです。機が熟せば、霊の力がひとりでに顕現するものです。
高級霊に秘められた創案と実現の能力は、たぶんあなた方人間の想像力を絶しております。機が熟し、用意万端が整えば、すべてが納まるところに納まります。盲目的な信仰は愚かですが、霊的知識に基づいて築かれた信仰は、人生哲学と将来への展望を構築する上での確固たる基盤となります。
人間は、今置かれている環境条件からいって、全知識と全叡知の所有者となることは不可能です。ですから、これまで導かれてきたように、これからもきっと導かれていくとの信念を持つことです。霊の力が挫折してしまうことはありません。
大霊は絶対に挫折しません。すべては定められた摂理に従って顕現し続けます。これまでに啓示していただいたものに感謝し、そして、後のことは辛抱強く待つことです」

キャノン───私の背後霊として集まるのは霊的真理をよく理解した霊ばかりでしょうか。

「もちろんです。ただし、援助を必要とする霊があなたのもとに連れて来られることはありますよ」

キャノン───その種の霊には手を焼かされますね。

「まったくです。でも、そういう迷える霊を暗闇から光明へと導いてあげる上で手助けとなることは、とても光栄なことです。気の毒な霊たちでして、すでに死んでいるのに、波動的には霊界よりも地上世界の方に近いのです。
苦境に陥って不安になった時は、気持ちが未来へ向かうのを制して過去を振り返り、これまでに遭遇した、人生の節目となった体験のことを思い起こしてみられることです。
万事休すと思えた時───とても解決は無理と思え、どちらを向いても頼るものがなくて途方に暮れた時のことを思い出してみられることです。
不思議にも道が開け、絶体絶命と思えたものが克服されていったように、霊の力はこれからも導き続けます。
 
キャノンという要職にあるあなたは、他の人にはない、真理普及の絶好のチャンスに恵まれています。大霊の道具であること───
その恩寵と愛と叡知と霊力を届ける通路となるチャンスに恵まれていることに感謝しなくてはいけません。
ミニチュアの形で内部に神性を宿していながらこの事実にまったく無知でいる人が、実に多いのは悲しいことです。その意味でもあなたは感謝しなければなりません。収支勘定をすれば、きっとあなたは貸しよりも借りの方が多いと思いますよ。」

キャノン───間違いなくそうでしょう。

「もっとも、私が見ているのは霊的なバランスシートですけどね・・・・・・」

キャノン───さぞかし、ひどい状態でしょうね? 

「そんなことはありません。人間としてはきわめて健全です。要するにあなたは、まだまだ果たさねばならない仕事が残っているということです」

キャノン───施す以上に施しを受けているようです。

「そういうものです。サービスを施せば、必ず霊界からそれ以上の施しを受け、時にはあふれるほどにもなることがあります」


牧師として、キャノンも数え切れないほどの祈りを捧げてきたことであろうが、シルバーバーチも、ハンネン・スワッファー・ホームサークルによる交霊会において、開会の祈りと閉会の祈りを捧げるのが慣例となっていた。次の祈りは開会の祈りの典型的な例である。

🕊
日ごろの重荷・心配・不安・悩みごとや取り越し苦労のすべてを、しばし、わきへ置いていただきましょう。可能なかぎり高度な調和状態を成就するように努めましょう。知識と霊的成長を少しでも促進する目的をもとに、向上心をいやが上にも高めましょう。
至尊至高の創造主たる大霊を超えるものは、この宇宙には存在しません。私たちはその大霊に似せて創造されております。生命そのものを賦与し、聖なる息吹を吹き込み、無限の神的属性を授けて下さった、その大霊とのより緊密なる調和を求めて祈りましょう。

これまでに啓示していただいた霊的知識によって私たちは、全生命の裁定者、宇宙の全機構の創造者、そしてその完全なる叡知によって全存在を治め、調整し、規制するための摂理を考案なされた絶対的霊力について、より明確なる心像を抱くことができるようになりました。

その崇高なる霊力の大きさは、到底、私たちには測り知ることはできませんが、その影響力は心臓の鼓動ほどに身近に存在し、永遠なる生命のいかなる側面においても、切っても切れぬ絆によって結ばれているのでございます。
その大霊の力は、ある時はインスピレーションとなり、ある時は啓示となり、ある時は叡智となり、ある時は真理となって届けられ、またある時は支援の力となり治癒力となって届けられます。それが神性を帯びたものであることは、各種の媒体を通して顕現された時に、それを受け入れた者へ及ぼす絶大なる影響そのものが物語っております。

私たちはその媒体として、喪の悲しみの中にある人には慰めを与え、病に苦しむ人を癒やし、弱き者に力を与え、悩める人に導きを与え、かくして、手の届くかぎりの範囲において、不幸な人々を助けることができるという測り知れない名誉に浴することができるのでございます。この名誉を大霊に感謝し、更に大きな貢献の道具となることを祈るものです。
ここに、あなたの僕インディアンの祈りを捧げます。
                                   







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