役に立つ喜び
私はかつて地上で何年も生活し、こちらへ来てからも何千年もの歳月を過ごしてきましたが、向上すればするほど宇宙の全機構を包括し大小あらゆる出来ごとを支配する大自然の摂理の見事さに驚嘆するばかりです。
その結果しみじみと思い知らされていることは、知識を獲得し魂が目覚め霊的実相を悟るということは最後はみな一人でやらねばならない───自らの力で〝ゲッセマネの園〟に踏み入り、そして〝変容の丘〟に登らねばならないのだということです。
悟りの道に近道はありません。代わりの手段もありません。安易な道を見つけるための祈りも儀式も教義も聖典もありません。いくら神聖視されているものであっても、そんな出来合いの手段では駄目なのです。師であろうと弟子であろうと新米であろうと、それも関係ありません。
悟りは悪戦苦闘の中で得られるものです。それ以外に魂が目覚める手段はないのです。私がこんなことを説くのは説教者ヅラをしたいからではありません。これまでに自分が学んだことを少しでもお教えしたいと望むからにほかなりません。
さらに私は、一見矛盾するかに思えるかもしれませんが、人のために役立ちたいと望む人々、自分より恵まれない人々──病める人、肉親を失える人、絶望の淵にいる人、人生の重荷に耐えかねている人、疲れ果て、さ迷い、生きる目的を見失える人、等々に手を差しのべたいという願望に燃える人──要するに何らかの形で人類の福祉に貢献したいと思っている人が挫折しかけた時は、必ずやその背後に霊界からの援助の手が差し伸べられるということも知っております。
時には万策尽き、これにて万事休すと諦めかけた、その最後の一瞬に救いの手が差し伸べられることがあります。霊的知識を授かった者は、いかなる苦境にあっても、その全生命活動の根源である霊的実相についての知識が生み出す内なる冷静、不動の静寂、千万人といえども我れ行かんの気概を失うようなことがあってはなりません。
その奇特な意気に感じて訪れてくるのは血のつながった親類縁者──その人の死があなた方に死後の存続に目を開かせた霊たち── ばかりではありません。あなた方が地上という物質界へ再生してくるに際して神からその守護の役を命ぜられ、誕生の瞬間よりこの方ずっと見守り指導してきた霊もおります。
そのおかげでどれほどの成果が得られたか、それはあなた方自身には測り知ることはできません。しかし分からないながらも、その体験は確実にあなた方自身の魂と同時に、あなた方を救ってあげた人々の魂にも消えることのない影響を及ぼしております。
そのことを大いに誇りに思うがよろしい。他人への貢献の機会を与えて下さったことに関し、神に感謝すべきです。人間としてこれほど実り多い仕事は他にありません。
愚にもつかぬ嫉妬心や他愛ない意地悪から出る言葉を気にしてはなりません。そのようなものはあなた方の方から心のスキを与えない限り絶対に入り込めないように守られております。霊の力は避難所であり、霊の愛は聖域であり、霊の叡知は安息所です。イザという時はそれを求めるがよろしい。
人間の心には裏切られることがありますが、霊は決して裏切りません。たとえ目には見えなくても常に導きを怠ることなく、愛の手があなた方のまわりにあることを忘れないでください。
私としては、たった一言であっても、私の述べたことの中にあなた方の励みになり元気づけ感動させるものを見出していただければ、もうそれだけで嬉しいのです。私たちに必要なのは霊の道具となるべきあなた方です。豪華なビルや教会や寺院や会館ではありません。
それはそれなりの機能があることは認めますが、霊の力はそんな〝建物〟に宿るのではありません。〝人間〟を通して授けられるのであり、顕幽の巨大な連絡網のつなぎ手として掛けがえのない大切なものです。その道具たらんとして謙虚に一身を擲(ナゲウ)ってくれる人間一人の方が、そうした建造物全部よりも遥かに大切です。頑張ってください。
そしてこれからも機会を逃さず人のため、人のため、という心掛けを忘れないで下さい。世間の拍手喝さいを求めてはなりません。この世に生れてきたそもそもの目的を果たしているのだという自覚を持ち、地上に別れを告げる時が来た時に何一つ思い残すことのないよう、精一杯努力して下さい。
ここに集える私たち一人ひとりが同胞の幾人かに霊的啓発をもたらすことによって、少しでも宇宙の大霊に寄与することができることの幸せを神に感謝いたしましょう。
人間として霊として、こうして生を享けた本来の目的を互いに果たせることの幸せを感謝いたしましょう。人のために尽くすことに勝る宗教はありません。病める人を治し、悲しむ人を慰め、悩める人を導き、人生に疲れ道を見失える人を手引きしてあげること、これは何にも勝る大切な仕事です。
ですから、こうして神の愛を表現する手段、才能、霊力を授かり、それを同胞のために役立てる仕事に携われることの幸せを喜ばなくてはいけません。神の紋章を授かったことになるのだと考えて、それを誇りに思わなくてはいけません。
これから後も人のために役立つ仕事に携わるかぎり、霊の力が引き寄せられます。人生の最高の目標が霊性の開発にあることを、ゆめ忘れてはなりません。自分の永遠の本性にとって必須のものに目を向けることです。
それは人生について正しい視野と焦点を持つことになり、自分が元来不死の魂であり、それが一時の存在である土塊に宿って自我を表現しているにすぎないこと、心がけ一つで自分を通じて神の力が地上に顕現するという実相を悟ることになるでしょう。
こうしたことは是非とも心に銘記しておくべき大切な原理です。日常の雑務に追いまくられ、一見すると物が強く霊が弱そうに思える世界では、それは容易に思い出せないものです。ですが、あくまで霊が主人であり物は召使いです。霊が王様であり物は従臣です。霊は神であり、あなたはその神の一部なのです。
自分がこの世に存在することの目的を日々成就できること、つまり自分を通じて霊の力がふんだんに地上に流れ込み、それによって多くの魂が初めて感動を味わい、目を覚まし、健全さを取り戻し、改めて生きることの有難さを噛みしめる機会を提供すること──これは人のために役立つことの最大の喜びです。
真の意味で偉大な仕事と言えます。地上のどの片隅であろうと、霊の光が魂を照らし、霊的真理が沁みわたれば、それでいいのです。それが大事なのです。それまでのことは全てが準備であり、全てが役に立っているのです。
魂はそれぞれの使命のために常に備えを怠ってはなりません。時には深い谷間を通らされるかもしれません。度々申し上げてきたように、頂上に上がるためにはドン底まで下りなければならないのです。
シルバーバーチ
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